晴れ晴れ
すでに5年が経過したかと思いますが、最初にご相談に来た日は忘れられません。
「どうやって私たちのことを知られたんですか?」
「相談しやすい、設計事務所と検索したら御社だったんです。」
敷居が高いと思われがちな設計事務所を変えたいと思っていたのでこのようなお問い合わせをいただいたことがとても嬉しかったです。
と言ってもスタッフの皆さんが敷地内のカフェに良くいらっしゃっていたので、偶然ではなく、必然だったのかもしれません。
そんなところからスタートしたわけですが、
私たちにとっては就労支援施設の設計はとてもチャレンジングなプロジェクトでした。
最近は障害者と健常者に線を引くようなことも少なくはなり、このような建物は増えてきましたが、当時はまだあまり見慣れない場所だったかと思います。
就労支援施設とは、障害や疾患がある方の就労を支援し、かつ就職し働き続けていく過程を支援する施設のことです。
晴れ晴れでは、主に焼き菓子、チョコレート、パンを作る施設を構えており、それを障害者の方たちに教えながら製造しています。
クライアントからは、施設ではなく、家を設計してほしいとご要望をいただきました。
施設というと、どこもかしこもサインだらけで、必要以上にサポートがあり、どこか冷たい雰囲気を感じてしまう。
別にサインなどなくても普段から居る場所であればサインなんてないし、自分のことは当然自分でやる。
社会復帰させていく場所なので、ここから外に出ても普通に日常が送れるように家のような場所がほしいとのことでした。
とても素敵な考え方に私たちも就労支援施設という名前に意識されずに柔軟に設計することができました。
建築地は蕨駅すぐ近くにある芝園団地という大型の集合住宅群の中にあります。
最近では入居者の半数が中国籍の方とチャイナタウン化してきています。
市としては日中の架け橋との期待もされてここに移転することとなりました。
建物としては1階の半分ほどが製造場所になります。
残りの半分は利用者の方の食堂となっていますが、利用のない時はさまざまな使い方ができるように外部に面した一番良い場所に位置しています。
食堂の中には厨房もあり、飲食店の許可もあるので、シェアキッチンなどの使い方もできるため、今後は地域に開かれた場所になることも考えられています。
エントランスには晴れ晴れの看板商品のベーゴマクッキーにちなんで、鋳物のベーゴマが土間に埋め込まれています。
2階まで吹き抜けており、全体が見渡せるようになっています。
2階は事務所や会議室、利用者の更衣室、製造したお菓子のラッピングスペースがあります。
外部の植栽は多くの方のご支援により、数百本の四季を感じられる多種多様な木々が植えられています。
ここにいると本当に障害者も健常者も感じないくらい、とても温かく優しい空気が流れています。
理事長のとても明るい雰囲気にとてもとても長いプロジェクトでしたが、晴れ晴れとした気持ちの中で設計をさせていただきました。
設計データ
- クライアント
- 晴れ晴れ
- 用途
- 就労支援施設
- 建築地
- 埼玉県川口市
- 規模/構造
- 木造2階建て
- 延床面積
- 348.42㎡(105.26坪)
- 設計監理
- 総合:co-designstudio(小嶋) 監理:ヌイシロ(榎本)
- 構造設計
- TECTONICA INC.(鈴木、五十嵐)
- 外構
- greenshare(郷)
- 施工
- 布施建設工業(布施、根本)
- 撮影
- 金田幸三
- 左官WS
- 大下愛美